眠狂四郎無頼控全曲解説

今回は眠オリジナル・サウンドトラックの全曲解説です。
長いですよ~、要注意ですよ~ (^_^;)。
時間あるときに気が向いたら読んでね~。

「眠狂四郎」
このサウンドトラック全体を象徴し支配するメロディー。
全ての始まりであるこのモチーフの最初の一滴は
凛としたGACKT=狂四郎のイメージにインスパイアされて生まれた。
孤独、悲しみ、恨み、それらを背負って荒野に佇む混血の侍。
このメロディーは尺八、ピアノ、ハープシコード、弦等、
様々な音色で試されて、最も孤独感を醸し出したピアノが中心となった。
90年代のアブストラクトを彷彿させるループに絡む尺八、能管、鼓。
英国ブリストル的ビートと和のブレンドがなんとも美しく昇華できたと思う。
そしていきなり扉を開いたらそこでは荘厳なミサが行われている。
狂四郎にとっての悪夢。
そんなイメージで突然パイプ・オルガン・セクションが
カットイン&カットアウトされる。
そのパートに切り込んで来る笛とアナログシンセをミックスした
81~82年あたりの後期JAPAN的なソロや、
ヴァイオリンとヴィオラの掛け合いによる裏メロも大いに気に入っている。

「悪徳謀議」
この曲の原案はもう7年ほど前に生まれている。
超熱心なSUGIZOマニアの人達であれば、聴き覚えが’あるかもしれない。
バリトン・ギターの変則アルペジオ中心のこの曲の最も重要な要素は
盟友である真鍋尚之氏による素晴らしい笙に尽きる。
いかにも雅楽的、古典的演奏から幕を開けるも、
曲が進行していくにつれ、みるみる壊れ、狂気に彩られる笙の叫び。
こんな暴力的な笙を演奏できる奏者なんて世界中探してみてもそうはいないはず。
時には日本古来の、時には竹製のオルガンのような、
時には陰鬱な未来的な音を彷彿させる
真鍋氏のプレイ、本当に素晴らしい。
そして最後は和太鼓乱れ打ち。
BPM180のこの怒濤の和太鼓アンサンブルは、
まるで狂気の和楽器によるドラムン・ベースのよう。
これはなかなか革新的な音楽なんじゃないかな。

「ヲモイなぞる」
今回のサウンドトラックの中で最も重要で中心的役割を果たしているのが、
オーケストレーション・アプローチ。
この曲はこのテーマ、メロディーがすべての鍵。
ここからアンサンブルが生まれ、イントロのミニマム・ラインが生まれ、
そして荘厳なミサのイメージが’生まれた。
今回とことん追求したSGZ流オーケストレーションの、一つの雛形が’この曲かも。
水滴のようなハープのアプローチや中近東フィメール・ヴォイス、
そしてOrigaによる素晴らしいロシア正教的クワイア(物語の背景をふまえると
本当なポルトガル的じゃないといけないんだけどね・・・)、
すべての要素が完璧な繋がり調和を持って共存していると思う。
美しくも悲しく、戦慄を感じずにいられない音楽になったと思う。

「黒十字~UNDER;CORE」
とにかく恐怖感、オドロオドロしさを要求されて生まれた曲。
じつは9年前のH. ART CHAOSのアルバムのある曲をリミックスして、
そこから発展し、新たな生命を宿した曲。
仮タイトルは「黒ミサ」。
まさに異様な儀式、生け贄、断末魔の叫び、をイメージして生まれた。
この曲もOrigaのクワイアが最高に効いている。
そこに救われる感があり、もしくは冷たさ、恐怖を助長されているかもしれない。

「美保代」
物語のヒロインのテーマとして生まれた曲。
今回のオーケストレーション作品の中で、もっとも気に入っている曲かもしれない。
長年背負ってきた悲しみや痛み。それを乗り越えてすべてを包み込むような愛へ。
最後にはマリア的、聖母のような崇高な慈悲の愛へ昇華されていくような。。。
そう、この曲は今までのすべてのSGZ作品のなかで、
最も純粋に、強く大きな「愛」を表現できた作品かもしれない。
こんなに本望なことはない。
静かに、静かに進行する弦の響き中、水滴のようなハープと、
聖なる光を放つようなチューブラベルズが、最高に美しい。
この曲のBセクションで再び登場する狂四郎モチーフ。
しかしそこでのそれは孤独や悲しみを乗り越えた愛や優しさに満ち溢れている。
狂四郎目線でのこのモチーフはあくまでも悲しく。
美保代目線でのこのモチーフはあくまでも優しい。
この奇跡的なシンクロニシティを音楽で汲み取れたことは、
今回のプロジェクトの中でも最高の喜びだと、感じている。
そう、常に音楽のシンクロニシティは存在している。
それを気付けるか、汲み取れるか、それだけなんだ。
常にチャンネルを全開にしていれば、奇跡は降ってくる。

「無想剣曲」
今回出逢った多くの素敵な演奏家の人達の中で
とりわけ最高な一人が、この太鼓を叩きまくってくれた茂戸藤浩司氏。
この大規模な和太鼓アンサンブルは、
桶太鼓、締太鼓、大太鼓等、何種類もの太鼓をドラム・セットのように操り、
他にチャッパやドラ等鳴りモノ諸々、
そのすべてを彼一人でのオーバーダビングで表現している。
和太鼓は弦と同等に今回の作品中で最も重要なエレメント。
彼とセッションできて本当によかった。
荒れ狂う和太鼓オーケストラに絡むケチャ的ヴォイス・パフォーマンス、
随所に切り込む尺八、当時武士しか持つことが許されなかった楽器である能管の叫び、
そしてSGZ的スクリーム・ギターとアルペジオ。
この曲もすべての要素が奇跡的に繋がり合って、
本当に革新的な音楽が生まれたと思う。
仮タイトルは「殺陣」。
まさにバトルロイヤル、そして殺生の後に襲う虚無感を表現できたと思う。

「ぬくもりのなかで」
今回の舞台のクリエイティヴ・ディレクターから
武部仙十郎のテーマとしていただいた注文が
「父親的大きな愛情、優しさ」。
それをイメージして何曲か書いて、お渡しした時に言われた注文が
「・・・厳しさが足りん!」。
む~、どうすりゃいいんじゃい!、「厳しさ」なんて聞いてねぇぞ~!、
と悩んだ末にアプローチしたのが、
中間パートの尺八と後半のリズミックなアプローチ。
そしてめでたく先方は気に入ってくださった (^_^)。
美しく、優しくも、ピリっとした厳しさ、そして懐の大きさ。
それらをうまく表現できたんじゃないかな。

「迅雷」
敵、三雲迅雷のテーマ。
このサウンドトラック中、多くの楽曲に登場するこの尺八によるモチーフをベースに
やはり今回大活躍してくれた、き乃はち氏が即興で演奏してくれた曲。
彼は本当に素晴らしかった。
尺八、能管、篠笛、これらをとにかく吹きまくってくれた。
俺の強引な注文をなんとかカタチにしてくれた。
き乃はち氏は日本古来の楽器を伝統を重んじた素晴らしい演奏ができる人なんだけど、
同時にヴァイオリンやピアノとのアンサンブルの活動も推進している革新的な演奏家。
彼と出逢えたことは今回の最大の収穫の一つでもある。
この曲はそんな彼の尺八独奏。完全にワンテイク。一発OK。最高。
俺的には尺八が最も侍のイメージを醸し出せる楽器だと思って
アプローチしたんだけど、大正解だったな。
この超シンプルな音楽の中に
三雲迅雷の持つ厳しさ、ストイックさ、孤高さ、武士魂を表現できたと思う。

「爪弾く者たちのブルース」
仮タイトルは「仲間達」。
友情、気心知れた仲間。ちょっとした賑やかさ。
それらをイメージしたらなぜかブルージーになった。
仲間達と鳴らすフィンガー・スナップ(指パッチンね)を中心に
アコギなブルージーなヤツがいて、あたかもSAXのような篠笛がいて、
パーカスのような鼓がいて、ジャムってる、
なんだか江戸の下町ブルース。
いい感じになったんじゃないかな。
そして突然、シリアスに哀愁を感じる場面に切り替わる、遠くへ飛ばされる。
と思いきや、元の仲間達の世界に戻る。
コントラストを的確に表現できた思う。
イサギいい終わり方も結構イケてるんじゃないかな。

「美保代version“琴”」
そのまんま、「美保代」の琴独奏ヴァージョン。
物語のヒロインが演奏しているシーンのための楽曲。
なんだけど、これが大変だった。
ストリングス用に書いた元曲を琴独奏用に編曲したのはいいんだけど、
実際に独奏するにはチューニングや弦の数等、かなり無理があってね。
演奏してくれた木田敦子さんはその世界でのトップ奏者で、本当に素晴らしい演奏家。
なんだけどその彼女を持ってしても相当苦労してもらうハメになってしまいました。
結局セクションごとにチューニングを変えて、トラックを変えてのレコーディング、
それにかなり無理なベンドや、きわどいハーモニクスの多様。。。
ようは実際はこの曲ライヴでの独奏は不可能、超難曲になりました (^_^;)。
これを劇中サラっと演奏している美保代、
じつは超人的琴奏者、超絶技巧派天才演奏家じゃん!
だとしたらスゲェな。。。んなわけないか。。。

「宵闇の月」
この曲の元モチーフは2005年当時のもの。
そこから基本的には殆ど変更無しに、楽曲として完成させることができた。
制作側からいただいていた要望は「疑念」。
疑い、不安、不信感、ネガティヴなモードから、愛情、確信、安心感、ポジティヴなモードへ。
舞台のもう一人のヒロイン、彩乃の心の揺らぎを表現している。
徐徐に心を開いていく、許していくさま。
実はそれは物語りの重要なテーマでもあると俺は思っている。
ガット・ギターとモジュレーション・グショグショなクリーン・ギターのアルペジオ。
随所に織り込まれたサイケデリック感覚、宇宙的感覚。
月夜の神秘、色彩をうまく表現できた小曲だと思うな。

「ぬくもりのさきに」
「ぬくもりのなかで」の別ヴァージョン。
物語後半での展開を示唆するように、編曲を施した。
アレンジの展開も弦の演奏も全く別ものなんだけど、
尺八のソロだけは元曲と同じテイクを流用している。
それらのコントラストがなかなか面白いと思ってる。

「円月殺法」
舞台のクライマックスであり、物語的にも音楽的にも重要曲。
原型はやはり2005年に生まれていたモノを大改造して今回に至った曲。
第1部の張り裂けそうな緊張感を表現したアンビエント、
第2部のあたかも弧を描くような冷たい音の揺らぎと灼熱の鼓動、
第3部の浮遊する精霊のごときOrigaの歌声。
物語の精神的ヴァイブレーションを余すことなく音に変換できたと思う。
氷のごときクリーン・ギター、ループと絡み合うように進行する和太鼓や鳴りもの、
切り込む迅雷のテーマ、発狂するスクリーム・ギター、
すべての音が生き物のように蠢き存在する。
この緊張感を音楽にすることができたのは奇跡だ。

「NEMURIのテーマ」
このサウンドトラックのすべての音楽的モチーフや意識が流れ込んだ
大海のような最重要曲。
同時に俺の今までの音楽的経験、俺の中にある音楽のあらゆる要素や記憶、
それらがオーケストレーションと和楽器を中心としたこの曲アレンジの
隅々まで意識を充満させて、存在している。
結果、3つの独立した構成からなる組曲のような、10分にせまる大作になった。
第1部は壮大な大江戸。賑わう街。そびえ立つ荘厳な江戸城。
ギザの大ピラミッドのイメージを江戸に転写して、このモチーフが生まれた。
象徴的な大太鼓の響き、賑わいを体現する篠笛、大空を舞うかのようなピッコロ、
すべてが威風堂々としたイメージ、だけどどこか悲しさを背負う。
第2部は哀しくも、傷を背負いながらも、ひたすら疾走するイメージ。
1stと2ndのヴァイオリンが二重奏のように絡み合いながら進行していく。
全体を支配する荒れ狂う和太鼓アンサンブル、
その存在だけで瞬時に「和」へ導く尺八の響き、
このセクション最後のクライマックスはどこまでも昇天していくかのようで、
あらゆる要素が本当に気に入っている。
第3部は最後にもう一度、狂四郎のテーマをリフレインする必要があった。
それはすべての終結であり、始まりでもある。
この物語のあらゆるエレメンツがここに集束し、ケミストリーが再発する。
最強に盛り上がるクライマックスを経て、
最後には孤独に、孤独に、誰にも看取られずに、
荒野で独りひっそりと息を引取るように、空間に溶け込んでいくように、終わる。
哀しみだけを残して。。。
今回のオーケストレーションのスーパーバイズと最高の指揮をしてくれた
藤原いくろう氏に心から感謝している。
どの曲にもいえるけど、特にこの曲のポテンシャルやダイナミズムを
余すこと無く表現してくれた、氏の素晴らしい表現力とスキルが
このサウンドトラックに生命力を与えてくれた。
とにかくこの曲はSUGIZOの音楽の、限界ラインを突破して、
更なるスッテプへ押し進めてくれたような、
俺の音楽歴の中でもとりわけ重要な曲だと思う。
ここからまた新しい始まりを迎える。。。

以上!
おつきあい、ありがとうでした~。
これからもこの音楽中毒症状はから抜け出せなさそうだ~。
今後の動きをぜひ期待してくださいね。

SGZ

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